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吉岡学長(立教大学総長)による式辞

立教セカンドステージ大学修了生の皆さんへ(2014年度修了式)

2015年3月23日
立教大学総長
立教セカンドステージ大学学長
吉岡知哉


立教セカンドステージ大学は、本日、本科第7期生90名、専攻科第6期生44名に、立教セカンドステージ大学修了証書を授与いたします。
修了生の皆さん、おめでとうございます。
心よりお祝いを申し上げます。

去る3月20日、同じこのチャペルで、本学を今年度で退職される方々をお送りする記念式典がありました。立教学院の定年は65歳ですので、この3月いっぱいで定年退職されるのは1949年4月から1950年3月までに生まれた方々です。2008年の『平成20年厚生労働白書』では、1947年から1949年までに生まれた世代を「団塊世代」と呼んでいるので、この定義に従えば、今年度65歳で定年を迎えた学年が団塊世代の最後の学年ということになります。

もちろん教員の定年は大学によっていろいろです。企業の定年は大学以上に違いがあるでしょう。しかし、この学年の多くは現場の中心部分からは退いているのではないでしょうか。

この学年は1968年4月に18歳、現役ならばこの年に大学に進学しています。その5月、パリでは「5月革命」が起こり、夏には「プラハの春」がワルシャワ条約機構軍によって弾圧されました。ベトナムでは戦争が激化しており、世界各地で反戦運動が広がっていました。日本のみならず世界の多くの国で、学生たちの運動が歴史の中で大きな力となった年です。
1968年は、政治から社会生活、そして文化・芸術の領域に至るまで、第2次世界大戦後の大きな結節点となりました。

今年は戦後70年にあたります。青年時に戦争を直接体験し記憶する世代の多くが世を去り、戦後のベビーブームのさなかに生まれた世代が社会の中枢から退くのと歩調をあわせるように、日本社会は大きく変わろうとしています。
また今年1月には、日本人2人がシリアでイスラム国に拉致され、殺害されるという事件が起こりました。
さらに、つい先日にはチュニジアの博物館が襲撃され、日本人観光客が殺傷されました。銃撃を受けてけがをした日本人観光客の女性が、病院で外国の放送局のインタビューを受け、それが日本のテレビで放送されるという事態はほとんど初めてではないでしょうか。
グローバリゼーションが加速する中で世界情勢もますます混沌とし、時代の困難は増しています。

繰り返しになりますが、「団塊世代」の親たちは戦争を直接体験し、戦後の復興と成長を支えた世代です。「団塊世代」は、兵士であった親の世代の経験を受け継ぎながら、「戦争を知らない子どもたち」として、戦後民主主義とともに生きてきました。
1968年を18歳で迎え、70年前後に学生生活を送った「団塊世代」の最後の学年が大学や企業の現場から去るということは、日本社会の構成にとって一つの節目をなすのではないかと思います。

さて、立教セカンドステージ大学は、その趣旨として「学び直し」と「再チャレンジ」のサポートを掲げています。この2つの目的は、直接には、一人ひとりのセカンドステージ大学学生の個人的な「学び直し」と「再チャレンジ」を指しています。しかしより大きな文脈で考えるならば、「学び直し」と「再チャレンジ」はそれぞれの個人のレベルに還元されるものではない、と言うべきでしょう。

「学び直し」ということを考える時、知識や経験を増やし深化させることが大切であることは言うまでもありません。しかし知識や経験の増大や深化は知の過程として、言わば自然のプロセスです。人間の知的活動にとってさらに重要なのは、そのようにして獲得した知識や経験をより広い文脈のなかに位置づけること、知識や経験の獲得と思考の深化の過程そのものを辿り直すことにある、と私は考えます。その過程を経て、経験や知識は更新されて、いわば個人の所有物から社会的なものへと変わり、次に受け継がれて行くのです。

このような知の運動過程はとりわけセカンドステージ大学で学ぶ意義という点で重要だと思います。立教セカンドステージ大学は、世代の経験を次の世代、次の次の世代へと受け渡すことができる貴重な組織なのです。

立教セカンドステージ大学で学んだ皆さん、
私たちに続く世代のために、セカンドステージにおける成果をぜひ積極的に社会に還元し、未来へと受け渡していただきたいと思います。

あらためてお祝いを申し上げます。
立教セカンドステージ大学修了、おめでとうございます。

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