立教セカンドステージ大学にご入学された、本科87名、専攻科47名、計134名のみなさん、私たちはみなさんを心から歓迎いたします。ようやくコロナをめぐる状況も落ち着いてまいりましたが、今後も、みなさんが豊かなキャンパスライフを送れるように、私たち教職員は、万全の対策を講じ全力でみなさんの学びを支援いたします。
さて、立教の歴史は、1874年、アメリカ聖公会の宣教師、チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教が築地に「立教学校」(St.Paul’sSchool)を創立したのが始まりで、実に148年もの歴史を有しているわけです。
立教大学を開設したのは「聖公会」、聖書の「聖」、公共性の「公」、教会の「会」で「聖公会」と言い表すキリスト教会ですが、聖公会は英国国教会、イングランド国教会が源流の、世界約165カ国(8,500万人)に広がる教会です。これはプロテスタント教会では最大の規模であり、ローマ・カトリック教会と共に国連の正式NGOで、世界中に聖公会の大学、研究所や病院、社会福祉施設があり、英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学も聖公会と歴史的につながる大学です。このように、世界的なネットワークにつながっている大学は、日本では他に類を見ることができません。
聖公会の歴史は西暦597年まで遡ります。聖公会の考え方の特徴を一言で言いますと、ローマ教皇絶対主義も、プロテスタント教会に見られる聖書絶対主義も取らないこと、つまり、あらゆる「絶対主義」や「原理主義」を否定するところにあります。真理を求めて「道」のただ中を歩み続けることを大切にしてきたのです。このような流れの中で、シェイクスピアやアイザック・ニュートン、ロバート・ボイルらに代表される人類の知を形成した、聖公会につながる文学者、自然科学者が多数輩出されてきたことは決して不思議なことではありません。立教大学もこの歴史の中で生み出されたのです。みなさんも、人類の知の遺産を継承し、真理を絶えず探究し続ける旅人であります。
おそらく、みなさんは、これまでの人生の旅において、真理を徹底して探究する時と機会を待ち望まれてきたのではないでしょうか。そして、いよいよ、今日、この日、この場所から、みなさんの真理を目指した終わることのない、時間と空間を超えた新たな「旅」が始まります。思う存分、その真理探究の旅の喜びと感動、また時には難しさをも楽しんでいただければと願います。私たちはみなさんがこの旅を歩まれるための最高最善の研究環境を提供すると共に、立教セカンドステージ大学が誇る最高級の研究者である教員たちが、みなさんお一人おひとりの旅の同伴者となります。
人類が築きあげてきた「知」の体系に対する深い造詣と、これを現実の世界、社会の中で適応していく力を持ちうる「ひと」を生み育てる「場」として、私たちの立教大学は存在しています。この「建学の精神」を基として、時間と空間を超えて、人と人をつなぎ、世界につながる大学で、この1年間、みなさんには学んでいただきます。
立教セカンドステージ大学は、単なる生涯学習の場や文化講座プログラムではありません。そうではなく、「学び直し」と「再チャレンジ」の<プラットフォーム>として、私たちは位置づけています。体系的に設定したテーマに応じて、一年間、集中的に学びます。同期の仲間たちとゼミナールを作りあげ、修了論文の作成を目指します。このプロセスを通して、新たな人と人とのつながりが生まれ、当初は思い描いてもいなかった新たな課題を発見することもあります。シニア世代の方々に、<セカンドステージの生き方>を自分自身でデザインし、修了後は、再び社会に参加し、貢献する多様な担い手として、その後の人生をいきいきと過ごしていただく。その契機を提供することが、設立以来の私たちの思いです。
立教セカンドステージ大学には、学び直し、再チャレンジに加えて、もう一つ重要なキーワードがあります。それが、「異世代共学」です。立教セカンドステージ大学の学生と立教大学の学部生や外国人留学生が交流できる場が用意されていますが、その一つが、学部生対象の全学共通科目です。立教セカンドステージ大学の学生も、一定の条件のもとに、全学共通科目を受講することができます。若い学生たちも、セカンドステージのみなさんから、さまざまな刺激を受けています。
みなさんはこれまでの50年以上に亘る人生の中で、それぞれの方ならではの社会経験を積み重ねてこられました。立教セカンドステージ大学での課題は、みなさんが蓄積されてきた知識と経験を、今一度ふりかえりつつ、また別の視点から見つめ直し、理解し直すことにあります。みなさんのこれまでの歩みを、自分という存在を越えたより大きなコンテキスト(文脈)の中に置いて再解釈することで、最終的には「私は何者なのか」という問いに対する解に取り組んでいただきます。みなさんがこれから豊かで自由な人生を過ごしていただくために、立教セカンドステージ大学で「真理」に触れてください。半世紀を超える人生をあらためて言葉に置き直し、新たな可能性を築いてくだることを願います。
これからのみなさんの立教大学での学びと生活が豊かに恵まれたものとなりますよう、お祈りしつつ、訓示とさせていただきます。あらためまして、ご入学、誠におめでとうございます。